Addiction Report (アディクションレポート)

妊娠・出産・育児にまつわる偽情報に依存する人たち〜漠然とした不安から誤った情報を信じてしまう〜

現在初めての妊娠中の筆者。母親学級や両親学級に参加すると、助産師に指導された内容に疑問を抱き……。医学的根拠があるのか妊娠や出産、育児に詳しい小児科医の森戸やすみ先生に「偽情報に依存する人たち」をテーマに話をうかがった。

妊娠・出産・育児にまつわる偽情報に依存する人たち〜漠然とした不安から誤った情報を信じてしまう〜
小児科医の森戸やすみ先生(撮影:姫野桂)

公開日:2025/08/06 02:00

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ネットやSNSが普及し、妊娠・出産・育児に関して多くの情報を手に入れられるようになった。しかし、中には誤った情報も飛び交っており、それを信じてしまう人もいる。また、助産師の中にも“偽医療”を妊婦や経産婦に指導するケースも珍しくない。小児科医の森戸やすみ先生は、妊婦や経産婦は「漠然とした不安がある」と語る。

森戸やすみ先生ご協力のもと、妊娠や出産、育児にまつわる偽情報について不定期に連載していく。

初めての妊娠の人は誤った健康情報に頼りやすい

――私自身、母親学級で助産師から「砂糖を含んだ食べ物や飲み物は出産当日以外禁止」や、真夏日が続く毎日なのに「冷え対策で靴下を履くように」といった行き過ぎとも言える自然派の指導を受けました。乳腺炎になった際、キャベツで胸を冷却する民間療法も助産師の教科書に載っていたという記事を読んだこともあります。このような偽情報を指導したり、信じてしまったりするのはなぜなのでしょうか?

 

少子高齢化している現在、妊娠をしても実際どうだったのか実体験を聞く機会が少ないです。よほど反論するようなことがなければ、助産師に言われたことやネットの情報を信じてしまいます。子どものためになるとか、体のために妊娠中はこうすべきだと言われると素直に聞き入れてしまう人がほとんどだと思うんです。漠然とした不安があるので、それが偽医療だったとしても信じてしまうのではないかと思います。

 

私も、得意分野でなければ調べ物をするにしても何を調べたらいいのか分からないので、間違っていることを信じてしまうことだってあります。そして、妊娠中は本当にそうしないと健康被害が出ることなのか、単なる習慣やしきたりなのかといった真偽不明な情報がたくさんあるので、妊婦さんはそのどれかに惑わされてしまうのは、妊娠していない人より多いのではないかと。

ネットやSNSは信憑性の確認が難しい状況がある

――インスタグラムを見ていても、妊活や妊娠、出産・育児に関して怪しい情報がありますよね。

 

はい。私も外来で「この子の病気はこれだと思うんです」とスマホを見せられることがあります。でも、「この情報は誰が書いていますか?」と聞くと「えっ!」という反応で一緒に確認すると専門家による病気の説明ではなく、一個人の体験談だということがあります。自分の子どもがこんな病気でこんな症状だったという部分だけぱっと見てしまっただけという。そういう場合は、誰が書いたどんな情報かを確かめないとダメですよねという話をします。

 

今、SNSで誰でも発信ができてしまいます。今までになく調べ物が簡単にできるし、「不安に思っていたけどこんなふうに解消できたよ、これはいいよ」という善意から発信をする人もいると思います。

インタビューに答える森戸やすみ先生(撮影:姫野桂)

善意からの情報発信と商業目的の情報

――一般の人がSNSで発信をするのは善意からということですね。

 

善意から発信する人と、もう1つは商売・ビジネスとして発信している人もいます。とあるハーブティーのサイトが助産師と共同開発を謳っています。そのハーブティーにいかにも母乳の詰まりが取れるような商品名、母乳の分泌量が増えるような名前をつけて販売されています。医薬品のように効果と安全性を評価せずに「乳腺のつまりが取れる」「母乳が増える」といってはいけないので、医薬品医療機器等法や景品表示法などで規制されるギリギリの表現で効能を誤解させる売り方です。

そして、その助産師は共同開発者であることを開示せずに他所でもハーブティーを勧めているんです。

 

――助産師は看護師の資格も取得している医療関係者であるのに偽医療を指導するのはおかしいなと思います。

 

乳幼児健診をしていると、「助産師からこういうことを言われたのですが本当ですか?」という質問の中には耳を疑う変な内容のものがあります。医学的根拠や科学的根拠のないことを資格保有者が言ったらそれは本当だと受け取る人も多いです。

 

おそらく「若い女性には教えてあげないといけない」という気持ちがあるのだと思います。助産師でなくても日常生活で若い人に説教をする人って結構いるんです。見知らぬ人からも「そんなにお腹が大きいのに靴下を履いていないなんて何を考えているの?」と突然言われることがあります。他にも小さい子を連れている若い母親に対して「靴下を履かせなさいよ」とか「こんなものを食べさせて」とか何をやっても泣き止まない赤ちゃんに困っている母親のところに高齢女性がやってきて「抱っこしてあげて」と言うことも。“若い女性は至らないものだから私がなんとかしてあげなきゃ”という人は男女ともにいます。

 

少し前にSNSで話題になった、子どもを連れた若い女性がスーパーで惣菜のポテトサラダを買っていたら高齢男性に「ポテトサラダくらい自分で作れ」と言われた事例も自分が教え諭すことに気持ちが良くなっているんですよね。そういうマインドの人が母親学級や離乳食教室に一定数いるのだと思います。

母親学級のようなところでは、助産師、看護師、保健師などは、根拠のあることなのか自分の感想や意見なのかをはっきりさせて話をしないといけません。指導、アドバイスは医学的根拠のあることでないといけません。そして、求められていないのに自分の感想や意見をいうのは、大きなお世話で、クソバイスと呼ばれる可能性があることを自覚しないといけません。

コメント

2時間前
よねっち

私口出したい!をやりがちなんで、

しかと 肝に銘じます。

私の時代 ネットではなく

たまごクラブ

ひよこクラブ

こっこクラブ

という雑誌が流行ったので頭に入れようとめちゃくちゃ読んでました。子育て雑誌のセオリー通りに行かずに1人で焦ったりもがいてました。

今思えば いらん情報でした。

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