Addiction Report (アディクションレポート)

「経済的なことは後回し」17歳で性風俗を利用し始め、30代でやめられなくなって〜ハルトの性依存(上)

17歳から性風俗店に通い始めたハルト。30歳を過ぎてからは借金を重ねながら、利用しないと何も手がつかない状態になっていきました。

「経済的なことは後回し」17歳で性風俗を利用し始め、30代でやめられなくなって〜ハルトの性依存(上)
性に依存しているハルト

公開日:2026/08/24 08:01

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ハルト(仮名、40歳)は、依存症外来で性的依存の診断(※)を受けた男性だ。現在、性依存の自助グループに通っている。借金で生活がままならないのに、性風俗店通いがやめられない。これまで約50回通い、総額250万〜300万円を費やした。

※アメリカ精神医学会の診断基準「DSM―5」では「性依存症」と呼ばれる診断のカテゴリーはない。一方、WHOの診断基準「 ICD―11」によると、性依存(性的依存症)と呼ばれるものとしては、強迫的性行動症がある。ICD―10では「性嗜好の障害」として捉えられていた。

過度な風俗通いや不特定多数との性行為のほか、人間関係やコミュニケーションを求める依存もあった。

「『ああ、行きたい』と思うと見境がなくなって、経済的なことは後回しになってしまう感じです。衝動が止められないのです」

「性風俗店に行くこと以外は考えられない」

性風俗店の利用は、性風俗店のポータルサイトを見るところから始まる。長い時には1日9時間見ていることも。一度サイトを見てしまうと、風俗店に行かずに済んだことはない。

「基本的は夜ですが、一度行きたくなると、性風俗店に行くこと以外は考えられなくなります。そうすると、サイトを見ずにはいられない。他の選択肢はありません。お金さえあれば、毎日、性風俗店に行くと思います」

ただ、最初から、借金をしてまで性風俗を利用し続けていたわけではない。自助グループで過去の自分の姿を振り返り、仲間に分かち合う中で、なぜ自分が性風俗にそこまでこだわるのか、掘り下げていった。

正直に語るうちに、それまでの家族関係や性体験が、今の自分の行動に色濃く影響していることが明らかになっていった。

ネットでの出会った女性と次々に性的関係、一人暮らしをきっかけに性風俗も

ハルトの初体験は16歳の時だった。相手はインターネットの掲示板で知り合った高校生。掲示板にあった連絡先にメールをし、やりとりを重ねた。「会いたい」と言われて、お互いの顔写真を交換し、すぐに電話をした。

「電話の後、付き合うことになりました。初体験のときの情景は今も覚えています。好きな人とつながっているという気持ちでした。会うたびに性行為をしていたので、ホテル代に困ったこともありました。彼女の母親にお小遣いをもらい、ホテル代として使ったこともありました」

この最初の交際が、性依存のきっかけになったわけではない。しかし、その後の性体験も、ネット上で出会った相手ばかりだった。

17〜18歳の頃は、チャットソフトを使って、性的な関係を結べる女性と次々に出会っていった。ユーザー同士が、メッセンジャーの機能を使って、文字だけでなく、音声やビデオチャットでやり取りをした。「メンタルヘルス」というチャットルームで出会った女性に会うために、遠方まで足を運んだこともある。同じ頃に、ネット掲示板のオフ会で知り合った女性の友人とも関係を持った。中学時代に好きだった女性と再会し、性的関係を持ったこともある。親しくなった女性とは性的関係を結ぶことが、10代で当たり前になっていった。

ハルトは伝統的なキリスト教系宗教の2世信者でもある。しかし信仰は性的な行動のストッパーにはならなかった。

「漠然と、婚姻外の性行為については戒律で何かしら規制されていると思ってはいました。でも“姦淫の罪”のことを知ったのは17〜18歳の頃。性体験の後だったので、『今さら気にする必要はないだろう』という感じでした」

性風俗を利用し始めたきっかけは、17歳の時だ。父から日常的に身体的な暴力を受けていたこともあり、両親との同居に限界を感じていた。母方の親戚が経営するアパートで一人暮らしを始め、その部屋にデリバリーヘルスの女性を呼んだのが初めての性風俗利用だ。この経験は、性風俗へのアクセスを気軽なものにした。

10代の頃のハルト

確実な出会いを求めて性風俗店へ行くようになる

性に依存し始めたと自覚したのは、30代後半になった2024年4月頃だ。

「この頃、ピンクサロンの店に通い始めました。指名料込み8000円でした。かつての交際相手に似ている女性に出会ったんです。特にぽっちゃりした体型が似ていて、『元カノに似ている』と話しました。元の交際相手との初体験と重ねていました」

その頃、異性紹介の出会い系サイトも利用するようになったが、性的な関係に至ることは難しかった。

「ぼったくり飲み屋に連れて行かれ、7万円の会計を強いられたこともありました。お金を出せば、確実にサービスが受けられる場所を求めました」

こうしてまた性風俗にハマっていった。

じっくりと人間関係を作り、恋愛関係に発展していくプロセスを踏んでいくことはハルトには難しかった。後に自助グループで話すうちに、女性とデートをしたことがないことにも気がつく。お金を払って、性的なサービスを受ける方がずっと楽だった。

池袋のソープランドには繰り返し行った。グループ内の店舗で5人ほど試し、最も気に入った女性を繰り返し指名した。一人の女性が吉原のソープランドへ移籍した時は、その女性を追いかけ吉原の店に通ったりもした。同時に、池袋の別の店にも足を運んだ。

求めていたのはコミュニケーション 

性風俗店の利用を繰り返す中で、心理的に最ものめり込んだR嬢は、新宿のデリバリーヘルスの女性だった。必ずしも性行為を求めたわけではない。R嬢との時間を作るために月1回、多い時は2回のペースで指名した。そのうち、彼女なしではいられなくなった。

「ホテルの室内で話したり、食事をしたりしました。性的行為以外のコミュニケーションがなければ、R嬢にはハマりませんでした。この頃、仕事が変わり、慣れない仕事のため、僕が『人が変わってしまったらごめん』と不安を伝えました。すると、R嬢は『心配だから定期的に顔を見せてほしい』と返し、放っておけないかのように振る舞ってくれました。そういう言い回しがよかった。そのコミュニケーションにハマっていったんです」

風俗で働く女性からすれば営業トークの一つだろうが、ハルトにとっては不安に答えてくれた嬉しさもあり、心が通じていると思い込んでいた。店のサイトや日記、SNSも毎日のように確認し、利用するたびに対等な人間関係と快楽を得られたと感じて満足した。

「初めてのお店でサービスを受ける時に重視するのは、女性の見た目や体つきですが、リピーターとなる2回目以降は何を話せるかを重視しました」

単なる性風俗好きではなく、「依存」と自覚したのは、どんな理由だったのか。

「対等に話せる時間と空間を買っていると思っていました。特に対女性では、お金を出さないとそんな対等な関係を築けない。お金がなくても、その関係が欲しくて通い続けました」

ただ、繰り返し通ううちに当然、金銭的な限界を迎える。

「通うのは月1回のペースだったのですが、そのペースを守れなくなっていきました。お金の工面が大変になりました」

ハルトが過度な性風俗通いに求めたものは?(撮影:渋井哲也)

借金が返済できず、督促がくるようになる

お金がなくなってからも、性風俗店通いを止めることはできなかった。

「クレジットカードには『スキップ払い』があります。本来の引き落とし月を、先延ばしできる仕組みです。そのスキップ払いを完済した後も、カードでの支払いを続けました」

「この頃、収入が上がりました。ただ、フルタイムの仕事は初めてで、睡眠は3時間程度しか取れなくなっていました。妄想を口にするほど心の調子が悪化して、主治医から抗精神病薬を処方されるほどになっていました。結局、その会社は4カ月で退職してしまい、スキップ払いもできなくなりました。督促が来るようになったのです」

この時の借金は、祖母の資産で一括返済した。それを機に性風俗通いをやめたらよかったのだが、それでも止めることはできなかった。

「収入がなくて、性風俗店を利用する回数は減ったんです。ただR嬢にハマっているのに、別の店に行くこともしていました。地味に借金が積み重なっていき、さらにカードを使っていました」

動画と出会うことで依存的行動の抑止力に?

無職になり、カードの支払いもできないのに、性風俗通いがやめられない——。そんな時期に、ハルトは筆者にLINEで性依存について告白してきた。依存症のクリニックにも通い始め、性依存と診断を受けた頃だ。

「性依存の初診の日から、性風俗には行っていません。ただ、少し不安なのは、性風俗のグループ会社のサイトをブックマークしていることです。風俗で働く女性たちは頻繁に日記を書いていますし、読めば出勤していることもわかります。その店をもてはやす匿名の掲示板もあります。そうした掲示板を見ないようにしていたのですが、最近になって見るようになってしまいました」

掲示板には動画サイトのURLが貼ってあり、その動画を見ることにもハマっている。

「それを見て、本物(の女性)に会いに行きたいと思ったら危ないと感じています。今は動画を見るだけで済ませられるのですが、その効果がどのくらい続くのかわかりません。でも、すでに2ヶ月以上店に行っていないということは、受診や自助グループ通いは僕にとって抑止力になっているのだと思います。散財は減り、依存症外来でも『行かない日をなるべく続けましょう』と言われています」

依存症外来や自助グループ通いで、風俗通いが止まっただけではない。過去を振り返るうちに、異常な家族関係の中で育ったことが、今の自分の依存行動に結びついているのではないかと気づいていった。

(つづく)

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