Addiction Report (アディクションレポート)

「やめ続ける」という、終わりのない偉業――高知東生が体現する継続の形

10年間、1日も休まずに何かをやり続けること。

それがどれほど過酷で、強靭な意志を必要とするかは想像に難くない。毎日同じ熱量を保ち、体調の良し悪しや気分の浮き沈みに関わらず一歩を刻み続ける。それは間違いなく、称賛に値する偉業である。

しかし、世の中にはそれと同等、あるいはそれ以上に難しい「継続」が存在する。 それが、「何かを、1日も休まずにやめ続けること」だ。

俳優・タレントの高知東生さんの歩みを見つめるとき、私たちはこの「やめ続ける」という行為の、圧倒的な難しさと尊さに直面せざるを得ない。

「やめ続ける」という、終わりのない偉業――高知東生が体現する継続の形
薬物依存からの回復10周年の記念メダル(高知東生さんX投稿より)

公開日:2026/06/25 04:04

関連するタグ

「やらない」を毎日、新しく選択するという闘い

何かをやり続ける場合、そこには目に見える成果や、「積み上がっていく実績」という報酬が伴うことが多い。周囲からも「頑張っているね」と認められやすく、それがモチベーションとなる。

一方で、依存症からの回復における「やめ続ける」という行為には、派手なゴールも、目に見える右肩上がりのグラフもない。「今日も使わなかった」「今日も踏みとどまった」という、他人からは見えない、そして昨日と同じゼロの地点を毎日死守する戦いだ。

それは決して「何もしない」ということではない。

むしろ、襲いかかってくる渇望や、ふとした瞬間に頭をもたげる過去の記憶、日々のストレスや生きづらさといったものと24時間体制で向き合い、その都度「今日も手を出さない」という決断を、1日も休まずに新しく下し続けるという、極めて能動的でエネルギーを消費する営みなのだ。

「10年」という歳月の重み

高知東生さんは、自身の薬物依存症という病をオープンにし、同じ苦しみを抱える人々のために啓発活動や当事者支援を続けている。

彼が発信する言葉が多くの人の胸を打つのは、それが綺麗事ではなく、泥臭く、今もなお現在進行形で「やめ続ける」戦いのなかにいる人間の言葉だからだ。どれだけ月日が流れようと、依存症という病に完全な終わりはなく、あるのは「今日一日をやめ続けること」の積み重ねだけである。

もし「10年」という節目を迎える、あるいは見据えるのだとしたら、それは実に3,653日以上もの間、一日たりともその緊張の糸を切らさずに戦い抜いてきた証に他ならない。

2026年6月24日、高知さんはその10年間を振り返り、Xに投稿をした。

「俺は10年前の今日逮捕された。今ではこの大しくじりのお陰で、色々成長もできたと思っている。自助グループの仲間など、知らなかった世界の人と出会えた。強がる日本男児として生きてきたけれど、ありのままの自分で生きられるようになった。何よりも薬物抜きで10年間ピンチを乗り越えられた。感謝だ」

手にしているのは、薬物依存からの回復(クリーンタイム)の節目に仲間から贈られる記念メダルだった。

「いつでもやめられる」という過信は、ときに人をずるずると深い沼へ引きずり込む。しかしそこから這い上がり、やめ続けるために仲間を頼り、自らの弱さをさらけ出すことがどれほど勇敢なことか。高知さんは自らの生き様を通して、私たちに伝えている。

やめ続ける人、そして待ち続ける人へ

何かを10年間やり続ける人も美しい。しかし、自分自身と日々対峙しながら「やめ続ける」ことを10年、1日も休まずに徹底することは、それは人間の精神が成し得る、もう一つの偉大な到達点だ。

「やめ続けることの難しさ」を知る高知さんだからこそ、その言葉には、いま現在も何かに依存し、苦しんでいる人々を孤独から救い出す強い力が宿っている。

ゴールなき道を歩み続けるその背中は、今日も誰かにとっての「生き直す灯火」となっているはずだ。

関連記事

コメント

12時間前
匿名

本当に偉業だと思います。

高知東生さん、回復を続ける皆の希望の存在です。

私も仲間と共に回復を続けもっともっと成長していきたいと改めて思いました。高知東生さん10年クリーンおめでとうございます。

そして希望の発信ありがとうございます。

コメントポリシー

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが確認した上で掲載します。掲載したコメントはAddiction Reportの記事やサービスに転載、利用する場合があります。
コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただいたりする場合もあります。
次のようなコメントは非掲載、または削除します。

  • 記事との関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 特定の企業や団体、商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 事実に反した情報や誤解させる内容を書いている場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合
  • メールアドレス、他サイトへのリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。以上、あらかじめ、ご了承ください。