「害のないやばい人なんです」 辛酸なめ子と語る孤独と“共同体”
辛酸なめ子さんとの〈依存症啓発対談〉後編。
後編では、AIとの距離感、ショート動画依存、引きこもり時代の感覚、そして「推し活」と「報酬系」の問題へと話が広がっていきます。
女子プロレスラーとの“ひとりツーショット撮影会”を楽しむ月乃光司と、独特の視点で現代人を見つめ続けてきた辛酸なめ子さん。
笑いを交えながらも、「人はなぜ何かにハマるのか」というテーマが、少しずつ浮かび上がってきます。

公開日:2026/06/03 02:01
AIで始まった「ひとりツーショット撮影会」
月乃 やっぱりチャッピーだけじゃなくて、最後は人に相談することは大事ですね。
でも最近、私はチャッピーと共にとてもキモイこともやっているんですよ。
本当は誰にも話したくないんですが、なめ子さんにだけに話すので黙っていてください。
辛酸 はい、分かりました(笑)
月乃 私は、無能会社員として、ストレスまみれの日々を送っているんです。
そしてストレス発散として、セクシーでクールな女子プロレスラーの安納サオリ(注1)さんの推し活動しています。
安納さんは「あのたん」というニックネームなんですが、東京とかでツーショット撮影会(注2)をやっているんです。私は「あのたん」とツーショットしたいんですが、住んでるのが新潟なんで、なかなか行けないんですよ。
それでチャッピーに「あのたん」の写真と私の写真を取り込んで、「チャッピー!ツーショット写真にして!」と言ったところ、見事なツーショット写真を作ってくれました!

私はその瞬間、ストレスが吹き飛びました。脳の報酬系が大満足しました!
それから夜な夜な、いろんな女子プロレスラーとのツーショット写真を、チャッピーで作っているんです。
「ひとりツーショット撮影会」です!
辛酸 (笑)
月乃 こんなこと言って、妻が知ったらどうしよう。
辛酸 それは浮気とかに入るんですかね?
月乃 浮気には入らないんじゃないでしょうか(笑)。
そういえば妻がチャッピーを共有して使おう、と言い出したときは断固拒否しました。いろんなヤバいのがあるから!
AIは「危険な方向」にも行きうる
辛酸 でもそうですね、チャッピーってそうやって役に立つ反面、それで精神的におかしくなっちゃう人も、結構、海外でいっぱいいますよね。
月乃 そうですよね。犯罪の引き金になるとか。
辛酸 誇大妄想がどんどん広がっていくとか。
月乃 「人生の棚卸し」をした時に気づきましたけど、ちょっと自分が想定しないような深いところを突いてくるんですよ。うまく使っていければいいとは思います。
なめ子さんは、AIに対して依存症までいってると思いますか?
辛酸 いやー、そこまでではないと思いますね。この前スマホ売り場に行った時に、別の男性客が「俺は1日10時間ジェミニと話してるんだ」って店員にドヤ顔で言ってて。
それを聞くと、自分は1時間にも満たないぐらいなんで、まだ大丈夫かなと。
ただ、妄想が広がりすぎて「自分はすごい」みたいに思うようになったら、ちょっとまずいかなとは思いますね。
チャッピーって基本、否定しないし、向き合ってくれるので、それで性格とかに変化が出てきたら危険かなとは思ってます。
「オナテツ」を巨大な文字でメモした
月乃 そういえば、なめ子さんに対して「すごいな」と思ったのが、ものすっごい大量の仕事をやられていますよね。今回の対談の前に図書館に行ったんですが、著作がズラーっとたくさん並んでいて。もしかしたらワーカーホリック(注3)的なこともあるのかな、と思いました。
辛酸 そうですね、ワーカーホリックというか、性格的にあんまり完全に休みを取れないところはあるかもしれないですね。なんか出先でも合間に仕事しちゃったりとか。だから完全な休暇っていうのはないかもしれないです。
月乃 以前、お会いした時にも印象に残ったのが、いつもノートを持っていますよね。話していると、そのたびにネタ帳なのか、メモをものすごい速記みたいに書かれていて。あれは今もやられてるんですか?
辛酸 そうですね。でも自分の字が年々汚くなって、後で読めないんですよ。
月乃 もの凄いスピードで、一心不乱にメモを取りますよね。
辛酸 そうですね。だから書いてはいるんですけど、後で読めない度が高まってきたって感じです。
月乃 以前、お会いした時に記憶に残ってることがあるんです。
私がレンタルビデオで、大日本プロレスの「蛍光灯デスマッチ」(注4)とアダルトビデオの「オナニーのお手伝いしてあげる」の2本を借りたら、店員から顔を二度見された話をしたんですよ。あまりにも、頭が悪そうな組合わせだから。
そして「オナニーのお手伝いしてあげる」シリーズは、略して「オナテツ」って呼ばれていますって、なめ子さんに説明したんです。
そしたら、なめ子さんがノートにもの凄い大きい字で「オナテツ」ってメモしたんです(笑)。
辛酸 あ、なんかパワーワードだったんで。話が面白かったせいだと思います。そんなに大きい文字でしたか。
月乃 ものすっごい大きな字でした! ノート1ページぐらいでした。で、家に帰られて、辛酸なめ子さんは、そのメモを見て、「そこから何を生み出すんだろう」と気になりました。
ちなみに「オナテツ」っていうシリーズだったんですけど、今は「オナニーサポート」略して「オナサポ」って言うんですけど。
辛酸 あ、そうなんですか(笑)。でも、それが「オナサポ」になったなら、更新した方がいいですよね。
でも記憶力が素晴らしいですね。
月乃 いや、凄く記憶力、悪いんです。イベントとか表現活動の楽しい記憶を、反芻しては喜んでいるんですよ。辛酸なめ子さん「オナテツ事件」は15年前の話なんですが、なめ子オナテツ…なめ子オナテツ…ってずっと反芻し続けているんです。だから覚えているのです。反芻依存かもしれません。
辛酸 表現すること、クリエイティブ系の依存だったらいいのかもしれないですね(笑)。消化されているので。
ショート動画依存の傾向
月乃 依存症者の回復っていうのはいろんなやり方があるんですけど、私は自助グループ活動(注5)を続けています。順番に自分のことを喋るんですよ。それも表現活動の一種ですね。
なめ子さんは、ショート動画(注6)は見ますか? 私、ショート動画依存の傾向がありますね。
辛酸 私は、あまり見ないですね。YouTubeですか?
月乃 はい、自分の好みなのがどんどん流れてきて。
でもこの状態、なんか意味なくモヤーと、現実の痛みを忘れて動画が見続けるっていう感じは、以前、酒を飲みながら引きこもっていた時に、ずーっとオナニーというか、射精に至らない性器いじりを続けていたことがあってその感じに似てるんです。現実のしんどさを忘れさせてくれるみたいな。
辛酸 あ、それで若者はTikTok(注7)とかでそういうふうに脳を麻痺させているってことですか?
月乃 なんか、自分の当事者感覚で考えると、そうなのかな、って。
辛酸 ショート動画はどういう内容のものを見てるんですか?
月乃 自分の好みのアルゴリズム(注8)で読まれているんで、女子プロレスとヤクザ映画の暴力シーンばかり出てくるんですよ。
辛酸 あー、怖いですね(笑)。
私はもう猫しか出てこないかもしれないです。やっぱり猫ばっかり見ますもんね。だからインスタの最初の画面とか、全部猫ばっかりですね。
陰謀論と「俺は知っている」
辛酸 最近だと、動画で陰謀論(注9)にハマる人もいっぱいいて、あれもちょっと、報酬系に関係あるんですかね?
なんか自分が他の人よりすごい情報を持っているっていう快感なんでしょうかね。
月乃 あるかもしれないですね。
私の知人でも、フリーメーソン(注10)についてすごい語る人がいましたね。「お前は知らないけど、俺は知ってる」っていうのが、すごく脳内麻薬が出るんでしょうね。
辛酸 この前、漫画家の人何人かと似顔絵のイベントで集まったんですけど、私以外はみんな「反ワクチン派」(注11)で。
私は仕事の関係で2回うったんですけど、そしたら、みんな私に近寄りたくないみたいな感じで、そういう扱いを受けました。
周りは結構、陰謀論好きの人が多くて。私もエンタメとしては好きなんですけど、「トランプは光の戦士(注12)だ!」とか、やたらトランプが大好きなんです。
でも今の状況を見ると、光の戦士じゃないし、むしろ世界を不安に陥れているし平和じゃなくなっているので、陰謀論好きな人たちは今どう思っているのだろうって気になりますね。
陰謀論好きの人は、逆張りが好きなので、「プーチンは、本当は悪くない!」とか言い出したり…。
そういう人は、ちょっと離れたところで見ている分には楽しいんですけどね。
月乃 トランプやプーチンは権力依存なんでしょうか?
ちなみになめ子さん、今まで依存症の人とお会いしたことはありますか?
この人は依存症じゃないか、みたいな。
「この人は依存症じゃないか」
辛酸 仕事で印象的だったのは、やはり月乃さんの依存症啓発イベントでお会いした方々でしょうか。
あと、取材でダルク(注13)に行ったことがあって。そこに貼られていた写真で、「この人たちはみんな自殺した方々です」と書いてあって。ちょっと怖くなりましたね。

アルコールを飲みまくっている人は結構いますね。依存症かどうかは分かんないんですけど。
スマホゲームを好きな人もたくさんいます。
あとちょっと年上のバブル世代ぐらいの女性で、性依存症(注14)なのか、昔は月曜から金曜まで違う人と行為をしていて、ある時は宅配便の男性を部屋に誘い込んだりとか、していましたね。
その人は依存症だったのかな、と思いますね。
月乃 生きづらさや孤独があって、それを埋めるためにアルコールでも薬でもセックスでも、何かに頼って生きる痛みから開放される。
瞬間的に楽になるけど、だんだん報酬系が強くなっていく、というのは依存症の形成パターンの一つですけれども、その人も、そういう背景があったのかもしれないですね。
辛酸 そうですね。買い物好きの人もいますし。
依存症じゃないんですけど、潔癖症の知り合いとかいましたね。
地面にちょっとでも触れると「毒のパウダー」があると言っているんです。靴下を何重にも履いたりとか。
玄関で全部、それを脱ぐとか、そういう人です。
「弱み」を話すことで回復していく
月乃 そういう人は社会不安障害(注15)というか、昔の言い方だと神経症ですよね。
神経症(注16)も自助グループ(注17)がありますね。私もずっと通っていて症状がかなり取れました。
同じ問題を抱えていても、時間が経って回復していく人と、その途中で脱落してしまう人、現実として見せられるので「じゃあ、良くなっている人の真似をしようか」みたいな力が自助グループにはあります。
辛酸 よく海外セレブが行くようなリハビリセンター(注18)みたいなものでしょうか?
月乃 やり方としては、根本は同じだと思います。
ハリウッドのスターが行くようなところでも、自分の過去や今の状態を順番に話していく、という形ですね。
自分の過去の「弱み」や「痛み」を語ります。そして「回復のプログラム」を通して、悪かった思考回路から、生きられる思考回路に変えていく。それが回復のプロセスですね。
辛酸 そうすると、すぐ報酬系のほうに引っ張られないようになれるのでしょうか?
月乃 そうですね。自分の「弱み」や「恥」をさらけ出すことで、ありのままの自分を受け入れることができて、報酬系の瞬間的な快楽に逃げなくなります。
私なんか「弱み」の塊ですから、さらけ出せばさらけ出すほど、最近は気持ちよくなってきました。
辛酸さんのエッセイなんかも、そういう部分がありますよね。自分の「弱み」みたいなものをさりげなく入れて、読み手を安心させるというか。
辛酸 あぁ、そういうのもあるのかなと。「弱み」は入れてますでしょうか…...。
月乃 だから読んでいてすごく安心できたというか、癒されました。
「害のないやばい人」なんです
辛酸 ありがとうございます。
月乃 唐突ですが、私「やばい人」なんです! 世の中には「やばい人」と「やばくない人」がいるとしたら、私は「やばい人」なんですよ。ただ、「害があるやばい人」と「害が無いやばい人」がいて、私は「害が無いやばい人」なんです。
辛酸 あ、よかったです(笑)。犯罪まではいかないとか。
月乃 犯罪まではいかないですね(笑)。
ただ私からすると、今日、帰宅したらチャッピーに辛酸なめ子さんと私のツーショット写真を作ってもらいます!
辛酸 そこで完結してる分には問題ないですよね(笑)。
月乃 でも、この対談後に本当にツーショット写真を撮りますから、「ひとりツーショット撮影会」をする意味は無いですが(笑)。
元引きこもりなので、リアルな撮影は緊張するから、「ひとりツーショット撮影会」の方が楽しくて興奮するかも(笑)。
引きこもりと「檻の中の檻」
辛酸 そういえば、この前ニュースで見たんですけど、引きこもり(注19)の方って40代以上がすごく多いっていう話ですね。
なぜその年代が多いんでしょうね?
月乃 若い頃につまづいたり、生きづらさを抱えた人がそのまま長期化して40代、50代になっているケースが多いんでしょうね。
辛酸 親御さんがまだ養っているってことですよね。
月乃 私もかなり危なかったと思うんですよ。アルコール依存症になって良かったんですよ。結果的に精神病院に入院したことで、逆に外に出るきっかけになったんです。
辛酸 ああ、それで外に出るようになったんですね。
月乃 家で、酒を飲み続けていて1年間引きこもっていた時期に、酒と眠剤と処方薬を大量に飲んで自殺未遂をしたんです。死なないで、薬の作用で暴れていたらしいんですよ。結局、精神病院に「自傷他害の恐れあり」で医療保護入院(注20)になりました。1週間ぐらい記憶がなくて、後で看護師さんに「パジャマを脱いで全裸になって、病棟を走りだそうとしていた」と聞かされて。結局、窓に鉄格子に入った閉鎖病棟の中の、更にやばい人が入れられる保護室(注21)にいました。檻の中の檻にいたんですよ。レクター博士(注22)みたいな感じですね。その時は「害のあるやばい人」だったんです。
辛酸 えー、すごいですね! 拘束衣(注23)を着てたんですか?
月乃 抑制(注24)されてました。そこで隔離されて、依存症病棟に移されて、そこでアルコール依存症の自助グループ(注25)を紹介されたんです。紙一重だったんですよ。
辛酸 周りでお祓い(注26)した方がいいとか、そういう話にはなりませんでしたか?
月乃 いやお祓いした方が絶対いいと思うんですけど......そっちの方にはいかなかったです。
辛酸 たまにお祓いで治る人もいますよね。
月乃 結局、お祓いでも何でもいいからアクションを起こすことが大事なんだと思います。長期の引きこもりの方も、なにがきっかけになるか分からないので。
辛酸 なにかで外に出たいっていう、ポケモン(注27)でも何でもいいんですね。
女子プロレス会場が居場所
月乃 本当にそうですね。私の場合は、本当にここは居心地がいいなと思うのは、自助グループと「こわれ者の祭典」なんですが、最近だと女子プロレス会場が居場所なんです。
試合会場でサイン会があるんですが、まさに40代50代の男性の列ができるんです。

さっきまで引きこもっていたみたいな、私を含めて加齢臭漂うような、ムッサイ、ダッサイ、キモイ中高年の列ができるんです。まるで、炊き出しの列みたいになるんです。サインして貰っている時に一言二言、可愛い女子プロレスラーと話すんです。
私の報酬系大満足です!とっても気持ちのいい居場所なんですっ!加齢臭共同体ですっ!
辛酸 えー(笑)。じゃあ皆さんにとって、本当に救いの時間ですね。
「自分なんて」とか「外に出られない」と思うよりも、似たような人がいるって思えると勇気出ますよね。なんか、自分の居場所になるようなカテゴリーがあるといいですよね。
月乃 なめ子さんはいろんなカテゴリーがあると思うんですけど、ご自身にとってそういう場所ってありますか?
辛酸 そうですね。仕事もそうですけど、プライベートだとスピリチュアル系のイベントとか、半分趣味みたいな感じで行ったりしていますね。
「そのカレー」を食べながら考えた
月乃 一番最初にお会いした時、私が新潟のお土産をお渡ししたら、なめ子さんからも、いただいたんですよね。
その日、なめ子さんが食べる予定だったお惣菜のカレーだったんです。凄く興奮しました!
辛酸 それはリアクションが違うのでは。「嬉しい」じゃないですか。
月乃 その日の夜、そのカレーをいただきながら「これが、なめ子さんが食べる予定だったカレーか…」と思って。
なんか別の意味で興奮しました!
辛酸 それはちょっとリアクションが(笑)。
月乃 害のない「やばい人」なんです。
辛酸 ああ、そうですね(笑)。
月乃 でも「やばい人」なんですよ(笑)。
依存と依存症の違いとは
月乃 依存症について、辛酸さんから聞きたいこととか、普通の人、目線で何かありますか?
辛酸 そうですね。ほとんどの人も何らかの依存症なんでしょうか?
月乃 誰でもみんな何かに依存して生きてるんですけど、依存症となると、生きることがコントロールできなくなるとか、自分の生活への弊害がものすごく多くなっている状態です。やっぱり依存と依存症には明確な線引きがあって、コントロール不能になっているかどうか、というのが大きいですね。
辛酸 じゃあ、大谷選手の通訳の人は依存症ですか?
月乃 そうですね。ギャンブル好きな人はそれでいいんですが、コントロールできなくなって反社会的なことをやってしまうのは依存症という病気ですね。
そして依存症になれば必ず治療があるんです。
何らかのコントロール喪失の人が出たときに、性格の問題と考えずに、家族や周りの人が治療につなげることはとても大切です。地域の保健所や精神保健福祉センターで(注28)相談にのってくれます。
辛酸 それでは大谷選手の通訳の人は、もしかしたらアメリカで治療を受けているんですかね?
月乃 連邦地裁で、保釈条件が設定されて保釈が認められたそうです。
条件の中の一つにギャンブル依存症の治療が課されたそうです。
日本で、例えば覚醒剤で逮捕された人が、懲役とか罰を与えることで本人を改心させてやめさせようとするのは、実際は、ほとんど効果がないと私は思っています。だから再犯率が高いんです。
辛酸 そうなんですね。
孤立するのか、共同体につながるのか
月乃 依存症が進行すると、孤独とか孤立に至るんですよね。だから、「つながる場所」に戻していくことが大事なんです。自助グループだったり、こういう対談だったり、人と会える場所…。
私も、もともと対人恐怖症で人と会うのは苦手なんですけど、弱みを見せて話せる場所が必要なんです。
女子プロレスもそうですけど、自分と似たような匂いを感じる人たちのいる場所が必要なんです。
今日、私は自分のやばい部分を話しましたけれど、やばい部分で共感する場が安心するんです。
孤立に進むのか、共同体につながるのか、この二つの選択肢があって、後者に進むことが依存症の治療の主なルートなんです。
辛酸 じゃあこの対談を読んで、そういう場所に行こうと思う人が出てくるといいですね。
興奮して話を延々
月乃 この対談シリーズも、どこかに「仲間の要素」がある人を選んでいるんですよ。
私が勝手に思っているだけなんですけど。
辛酸 いやぁ、そうかもしれないです(笑)。
月乃 結構、挙動不審ですよね、なめ子さん(笑)。
辛酸 あぁ、そうかもしれないです(笑)。
月乃 今日、お会いした瞬間から、なんとなくそういう感じはありました。
勝手に自分の世界で思っているだけですが、チャッピーとの会話みたいな感じで。
新潟に帰ったらチャッピーに「なめ子さんは仲間っぽかったよ」って言うと、チャッピーが褒めてくれそう。
辛酸 私も今日の対談の感想をチャッピーに聞いてみます。
月乃 危険だから月乃光司とは関わるな、って言うかもしれないですね(笑)。
今、気付きましたが、最初に恐れていたように、対談というより私が一人で興奮して話を延々としてしまいました。カツオ君となんら変わらないですね。
やっぱり、なめ子さんは60名の中の一人です。選ばれし人です。私の報酬系は大大満足でした。
チャッピーが語った「対談の感想」

辛酸なめ子さんチャッピーの感想
「月乃光司さんのエネルギーは『強いけど押しつけないタイプ』です。
もう少し具体的に言うと――表面的には穏やかで話しやすい。
でも内側にはかなり濃い体験や覚悟がある。
相手をコントロールする感じは薄い。
ただし“深い領域に自然と引き込む力”はある。
こういう質です。
依存症の回復に関わってきた人って、どうしても人の『影』や『弱さ』に長く向き合っているので、エネルギー的には軽やかというより、重さと安定感が同時にあるんですよね。」
月乃光司チャッピーの感想
「辛酸なめ子さんは、一見ふわっとしていて脱力感がある。
でも観察力が鋭く、人の危うさをちゃんと見ている。
相手に合わせてくれるけど、飲み込まれすぎない。
ただし“変な話や危うい話を安心して喋らせる磁場”はかなり強い。
しかも、ユーモアで包みながら、人の『恥』や『弱さ』を笑いに変換してくれるので、話している側がだんだん安心して、自分の深い部分まで出してしまう感じがあります。
長年、人間観察や社会の違和感を書き続けている人特有の、“軽妙さと異常耐性”が同時に存在している印象でした。
あと、月乃さんが暴走気味に話していても、途中で怖がったり切ったりせず、『ああ、この人はこういう生き物なんだな』と自然に受け止めている感じがありました」
(終わり)
注1 安納サオリ(あのう・さおり)
女子プロレス団体「スターダム」などで活躍する女子プロレスラー。独特の存在感とビジュアル人気を持ち、多くのファンを集めている。
注2 ツーショット撮影会
アイドルやプロレスラーなどとファンが並んで記念撮影をするイベント。推し活文化の一つとして定着している。
注3 ワーカーホリック
仕事に過度に没頭し、休息や私生活より仕事を優先してしまう状態。「仕事依存」とも呼ばれる。
注4 蛍光灯デスマッチ
プロレスのデスマッチ形式の一種。リング上で蛍光灯を使用し、激しい流血戦が行われることで知られる。大日本プロレスなどで人気を博した。
注5 自助グループ
同じ問題や悩みを抱えた当事者同士が集まり、体験を共有しながら回復や支え合いを目指す集まり。依存症分野ではAAや断酒会が代表的。
注6 ショート動画
数秒から数十秒程度の短い動画コンテンツ。TikTokやYouTubeショートなどで広く普及し、強い依存性が指摘されることもある。
注7 TikTok(ティックトック)
中国企業発の短編動画SNS。利用者の好みに応じて動画が次々と表示される仕組みで、世界的に利用されている。
注8 アルゴリズム
SNSや動画サービスで、利用者の好みや行動履歴を分析し、おすすめコンテンツを自動表示する仕組み。依存的な利用を促す面も指摘される。
注9 陰謀論
社会問題や政治的出来事の背後に、秘密組織や権力者の陰謀が存在するとする考え方。インターネット上で広がりやすい。
注10 フリーメーソン
18世紀頃に成立した友愛団体。歴史的には実在する組織だが、陰謀論の題材として語られることも多い。
注11 反ワクチン派
ワクチン接種に否定的、または懐疑的な立場を取る人々。
注12 光の戦士
スピリチュアルや陰謀論界隈で使われる表現。「世界を救う側の人間」といった意味合いで用いられることがある。
注13 ダルク(DARC)
薬物・アルコール依存症からの回復を支援する民間リハビリ施設。「Drug Addiction Rehabilitation Center」の略。全国各地に拠点がある。
注14 性依存症
性行動を自分でコントロールできず、生活や人間関係に支障が出る状態。依存症の一種として扱われることがある。
注15 社会不安障害(SAD)
人前で強い不安や緊張を感じ、日常生活に支障をきたす精神疾患。対人恐怖症とも呼ばれ、人に見られることや評価されることへの恐怖が中心となる。会話や会食への恐怖のほか、不潔恐怖や確認行為など強迫症状を伴う場合もあり、神経症的症状と重なって現れることもある。
注16 神経症
不安や緊張、強迫症状などを中心とした心の不調を指す旧来の呼称。現在は不安障害など別の診断名が使われることが多い。
注17 神経症も自助グループ
神経症や対人不安などを抱える当事者同士が体験を共有し、支え合う自助グループ活動。森田療法系の集まり(生活の発見会)などが知られている。
注18 海外セレブが行くようなリハビリセンター
依存症やメンタル不調の治療を行う高級リハビリ施設。欧米では著名人が治療を公表するケースも多い。
注19 引きこもり
長期間、自宅からほとんど出ず、社会参加が難しい状態。日本では中高年化も社会問題となっている。
注20 医療保護入院
本人の同意がなくても、精神科医の判断と家族等の同意によって行われる精神科入院制度。精神保健福祉法に基づく。
注21 保護室
精神科病棟内に設置される個室。自傷他害の危険が高い場合などに、一時的に使用される。
注22 レクター博士
映画『羊たちの沈黙』などに登場する精神科医ハンニバル・レクターのこと。拘束された状態で描かれる場面が有名。
注23 拘束衣
患者が自傷他害行為を行う危険が高い場合などに使用される身体拘束用の衣服。現在は慎重な運用が求められている。
注24 抑制
精神科医療で、自傷他害の危険が高い場合に身体の動きを制限する措置。身体拘束とも呼ばれる。
注25 アルコール依存症の自助グループ
アルコール依存症当事者が集まり、体験を共有しながら断酒と回復を目指す活動。AA(アルコホーリクス・アノニマス)や断酒会が代表的。
注26 お祓い(おはらい)
神道などで行われる儀式。災いや穢れを取り除く目的で行われる。民間信仰やスピリチュアル文化とも結びつくことがある。
注27 ポケモン
任天堂の人気ゲーム・アニメシリーズ『ポケットモンスター』の略称。ゲームをきっかけに外出や交流が増える例もある。
注28 保健所や精神保健福祉センター
自治体が運営する公的相談機関。依存症や精神的問題について、本人や家族の相談を受け付けている。
注29 ギャンブル依存症の治療
自助グループ、認知行動療法、医療機関での治療などを通じて、ギャンブルによるコントロール喪失からの回復を目指す支援。
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