Addiction Report (アディクションレポート)

“激痩せ”のアリアナ・グランデに注意を喚起するのは「余計なお世話」か、「責任」か

”激痩せ”と言われることに抵抗している米国の歌手で女優のアリアナ・グランデが突然、休業を宣言しました。外見について触れることは「ボディシェイミング」として非難されますが、何も言わずに放置することも問題ではないかと議論が巻き起こっています。

“激痩せ”のアリアナ・グランデに注意を喚起するのは「余計なお世話」か、「責任」か
アリアナ・グランデのInstagramより

公開日:2026/08/07 07:37

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異常なまでに痩せていく若い女性を止めようとするのは、「ボディシェイミング」か、社会の責任か。アリアナ・グランデ(33)の突然の休業宣言が、論議を呼んでいる。

歌手で女優のグランデの体型が話題になり始めたのは、出演作「ウィキッド ふたりの魔女」(2024)の北米公開時あたりから。摂食障害を抱えているのではとの声が出るも、本人は、かつての自分は不健康で、食生活とライフスタイルを改善したのだと主張していた。後編「ウィキッド 永遠の約束」(2025)と2本連続の撮影をし、その宣伝活動やアルバムのレコーディングなど多忙なスケジュールで単に疲労したせいだともされ、そのうち世間は静まった。

新曲のミュージックビデオで見せた姿が波紋

しかし、先日、新曲「Petal」のミュージックビデオがリリースされると、もはや否定できなくなったのだ。

6分程度のビデオで語られるのは、オーディションに挑戦する女性(グランデ)が高慢な男性エグゼクティブに品定めされることに我慢ならず、文字通り彼らを叩きのめすというストーリー。メッセージは女性のエンパワメントなのに、グランデ本人が「女性はスリムであるべき」という世間の定める価値観を必死で追求しているように見えるのだから、皮肉である。

新作のミュージック・ビデオより(Babydoll Music)

それからまもなく、グランデは、現在のツアーが終了したら休業すると宣言。翌日のシカゴでのコンサートで「(世間の批判に)反応したわけではない」「以前から計画してきたこと」と言い訳したが、来年夏に予定されていたミュージカル劇の主演を急遽降板されて製作チームがパニックした事実からも、突然の判断だったことがうかがえる。

いずれにせよ、世間の目を離れてしばらく休むのは、良いことだ。どう自己弁護をしたとしても、彼女の体、心、あるいはその両方が、今、健康な状態にないのは明白だ。そこは誰もが合意する部分だが、意見が分かれるのは、このような場合にも体型についてとやかく言うのは悪なのかという点である。

「余計なお世話」と「社会的責任」の境目はどこ?

「この人太った」「少し痩せればいいのに」など、他人の外見についてコメントをすることは、「ボディシェイミング」として非難される。「痩せたね」というのも、あまり気軽に言うべきではない。ティーンだった頃のリンジー・ローハンが過労で入院したところ、見舞いに来た関係者に痩せたことを褒められ、以後みるみる細くなっていったという例がある。外見についてプレッシャーや引け目を感じている女性たちにとって、それらの言葉は、たとえ悪意がなかったとしても、追いつめてしまうことがあるのだ。

グランデが痩せたせいで受けたコメントは、褒め言葉でも、もっと痩せるよう励ますものでもなかった。他人からあれこれ言われることに彼女自身が不快に感じたのはわかる。「ほらまたボディシェイミング」「放っておいて」と思うのも、もっともである。

しかし、グランデは、絶大な人気を誇るアーティストだ。彼女にあこがれ、彼女をお手本にする少女たちは、世界中にいる。彼女のファッションやメイクを真似る少女たちは、そのスリムな体を見て、自分もああならなければと思うのではないか。

そして我々は、そうやってまた古い美の価値観が次の世代に押しつけられようとしているのを、見て見ぬふりしていてもいいのか。「余計なお世話」と「社会的責任」の境目はどこなのか。

摂食障害を乗り越えたアクティビストの投稿で起きた議論

摂食障害を乗り越えた経験を持つイギリス人モデルで著者、“ボディ・ポジティビティ”(体をポジティブにとらえる)のアクティビストでもあるチャーリー・ハワードは、厳しい。グランデのミュージックビデオを見るとすぐ、彼女はインスタグラムに容赦ない意見を投稿した。

「このような映像、ビデオ、コンテンツが若い女性や少女に及ぼす悪影響について、私たちは話し合うべきです。私たちが見ている(グランデの)姿は、普通ではありません」

「モラル面でも、資本主義の観点においても、精神面での手助けと入院が必要な女性がこのようなビデオとアルバムをリリースするのを許可するなんて、信じられない。彼女のチームは恥を知るべきです。こういったもの(コンテンツ)を世の中に出すにあたっては、大勢の人たちの承諾が必要。家族やマネージャーも含め、すべての人が、彼女の病気を推し進めたということです」

昔より少しずつ世間の許容の幅が広がってきたかのように思われていただけに、ハワードは、「2000年代初期を繰り返してはいけません」とも主張する。実際のところ、物事は、今もそれほど変わっていないということだ。そんな現実は、人の心を暗くし、考えさせる。

ハワードの投稿には多くのコメントが寄せられた。それらの中には、「私はティーンの頃、摂食障害に苦しみました。『女性の体について何も言うな』というルールをひたすら貫くのは危険です。目の前でゆっくり死のうとしている人をそのままにしておいてはいけません」「今の時代、摂食障害の女性を(このようなビデオに出して)素敵だと褒めるなんて、信じられません。アリアナは明らかに栄養不足です。それを否定する人はどうかしています」などとハワードに同調する意見もある一方、「彼女は大人。自分の体については自分で決めればいいのです」という声もある。

しかし、最も多く「いいね」がついているのは、「基本的に、他人の体について何か言うべきではない。それは不必要で意地悪なこと。でも、これは違う。時には目の前で起きていることを認めなければいけません。たとえそれが失礼に見えたとしても」というもの。そして、「入院させて回復に集中させるべき時に働かせ続けるなんて、彼女のチームがやっていることは搾取。(中略)彼女のおかげで儲かっているから、治療に取られたくないのでしょう」というものだ。それが、より多くの人が今感じていることなのだと思われる。

彼女をアイドルと崇める少女たちのためにも健康に

だが、今のグランデにとって、これも“雑音”なのかもしれない。そこから逃れたくて、休養を取るのだろう。だが、その間、彼女はどう過ごすのか。必要としているケアを受け、自分を見つめることに専念するだろうか。

彼女をアイドルと崇める少女たちのためにも、ぜひ元気になり、健康な姿で戻ってきてほしい。

 

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