夏休み明け、子どもの様子に「あれ?」と思ったら――行動の奥に目を向けて(中編)
昨今ではスマホ依存、ゲーム依存という言葉が普及してきた。「依存症というカテゴリにこだわるあまり、その背景にある生き様が見えなくなってしまう可能性がある」現状に対する懸念と、スマホと子どもの適切な距離感について松本先生に語っていただいた。
公開日:2026/08/30 02:00
【前編はこちら】
夏休み明け、子どもの様子に「あれ?」と思ったら――行動の奥に目を向けて(前編)
「依存症」というカテゴリにとらわれず、その背景を想像して
――学校の先生など、周りの大人が子どもの様子を見ていて「依存しているかも」と思ったときは、どう関わるのがいいんでしょうか?学校でもスマホばかりいじっていたり、授業中も上の空になっていたりとか。
それって本当に依存なんだろうか?他のことに気を取られているような気がしてるだけなんですよね。
学校の休み時間とかに友達同士で話すんじゃなくて、いつもずっと一人でスマホを覗いてるっていう子たちがいるかもしれない。
その子は実は教室の中で居心地が悪くて、何していいかわかんないからとりあえずスマホをいじってる可能性もあるわけじゃないですか。
家でも、夜遅くまでスマホやゲームをやってるかもしれない。でもそれは、翌日の学校のことを考えると嫌な気持ちになっちゃって、嫌な気持ちを紛らわすためにスマホやゲームに逃げてる可能性だってあるのかなと思うんですよね。
子どもを簡単に「依存症」というカテゴリに入れるのではなくて、
「この子は教室の中でどんなことを考えているんだろうか?」
「学校、この子にとって楽しいんだろうか?」
「家庭ではどうなんだろうか?」
というように想像力を働かせてほしい。そして子ども達の様子を見ながら、まずは雑談をしてみるっていうことが大事なんじゃないかなと思います。
その中でもしかすると何かに依存しているかもしれないし、依存してないかもしれない。
依存してるんだけど、でも教室の中で話す人がいなくて依存せざるを得ないとか。あるいは家の中ですごくしんどくて、もう家に帰るのが嫌だと思ってたりとか。
そんな風に、行動の背景が見えてくるような気がするんですよね。
僕は依存症の概念が多くの人に知られるようになって感謝しているんだけども、ネガティブな部分も感じています。
その人全体の生き様を見ようとせずに、「依存症」っていうカテゴリで大騒ぎしている気もするんですよね。
相手を依存症と決めつけると、逆に見えなくなってしまうこともあるんじゃないかと心配しています。
――スマホ依存とかゲーム依存という概念が普及してきたからこそ、一括りに「依存症」というラベリングで決めつけないように注意が必要ですね。
家庭でも、例えば子どもが日がな一日スマホをいじっていると、お母さんは金切り声を上げるかもしれません。
でも、そもそもスマホが本当に悪いかどうかだってはっきりしない。
例えば、子どもがもし寝食を忘れて一日中ずっと勉強していても、お母さんは叱りません。でも、それも十分病的だと思うんですよね。勉強依存だと思うんですよ。
実際、そういう子が本当にいる。虐待とかのトラウマを受けていて、嫌なことを考えないようにするために勉強に没頭している子たちもいます。
だから、結局は親にとってその行動が好ましいと思うか思われないかっていう、大人の側の価値判断でキャーキャー言ったり言わなかったりするところはあります。
まず親自身が、「自分たちは一番何を心配しているのか」について、ちゃんと自問してほしいなあと思うんですよね。
スマホとうまく付き合うには?今後を生き抜くために
――スマホ依存は問題視されがちですが、便利なのも事実です。そんな中で完全にスマホを使わないというのは、あまり現実的ではないように思います。夏休みに限らず、子どもがスマホと程よく付き合うコツがあれば教えてください。
前の質問とも重なりますが、まず保護者にとって大事なことは、子どもたちと話し合うこと。
「今、スマホを使っている時間がちょっと長いと思うんだよね」
「どれくらいの時間だったら、あなたは守れると思う?」
子どもたちにこのような声をかけながら、ルールを一緒に作っていく。それも非現実的なルールは作らない方がいいと思うんですよね。
正直言うと大人だって、スマホばかり見ているじゃないですか。まず大人からしてスマホ依存症になっちゃっている。現代人はスマホなしではやっていけないですよね。
電車の中でも、みんな文庫本じゃなくてスマホばかり見ているでしょう。
大人でも、朝出勤するときにスマホをうっかり忘れたことに気づいた時の絶望感ってものすごい。もうあとちょっとで駅なのに、引き返したりすることもありますよね。そもそもSuicaもスマホに入っている。
大人が無理くり制限して、子どもがスマホを我慢できたとする。でも子どもが四六時中スマホに触れるような状況になったら、もう反動で逆にスマホ依存になってしまいますよね。
「その気になればいくらでもスマホは使えるんだけれども、今は使わない」っていう判断を、子どもたちがセルフコントロールできるようにしないと、もうこれから先の時代は生きていけない。
子どもがスマホを使わなくなることが、ゴールではありませんよね。
だとすれば、その本人たちの主体性を重視しながら
「どう?勉強の邪魔になったりしない?」
「何時から何時まではダイニングにスマホを置いておくのはどう?」
というように手伝うような感じで提案しながら、子どもたちの反応を伺うことを、粘り強く続けた方がいいような気がします。
実際、超難関私立中学に合格するような子たちも、いつもスマホいじってるんですよ。彼らは勉強もしてるんですけどね。
――保護者は目の前で子どもがスマホ、ゲームばかりしていると心配になりますが、あくまで子ども自身がセルフコントロールできるかがポイントなのですね。
子どもがスマホやゲームばかりしていたとしても、それが必ずしも依存症の症状とは限らない。
むやみに子どもの行動を制限するのではなく、まずはコミュニケーションを通してその背景を知る必要がありそうだ。
後編では、依存症の治療について解説していただく。
(後編に続く)
