クレカ禁止、即刻決断を 「依存症議連」で問題が鮮明に
5月14日から20日まではギャンブル等依存症問題啓発週間。オンラインカジノを使った違法賭博が大きな問題になるなか、超党派の「依存症対策議連」が会合を開き、公営ギャンブルのクレジットカード利用規制などについて、各省庁の関係者らから意見を聴きました。各省の対策の現状は?

公開日:2026/05/16 02:00
5月14日から20日まではギャンブル等依存症問題啓発週間。
全体としてスピード感、一体案が薄く、対策はなお決め手を欠く。そんなもどかしい状況が浮き彫りになった。オンラインカジノを使った違法賭博が大きな問題になるなか、超党派の「依存症対策議連」(会長=中谷元・自民党衆議院議員)が会合を開き、当面の課題や、公営ギャンブルのクレジットカード利用規制などについて、各省庁の関係者らから意見を聴いた。

5月11日、衆議院議員会館で開かれた「勉強会」には自民、維新をはじめ立憲民主、中道、国民民主、参政、共産、社民各党などに属する衆参両院の議員のほか、この問題を所管する省庁の担当者らが顔をそろえた。会場には対策の強化を求めている地方の団体の人も出席し、その数は約200人にのぼった。
政府がオンラインカジノ対策を柱とする新たな「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」を閣議決定したのは昨年3月のことだ。賭け金を仲介し手数料を得る決済代行業者や、SNSで違法サイトを紹介してもうける「アフィリエイター」の取り締まりも強めることが明記され、オンカジ対策に全省庁あげて取り組むことになった。
しかし、この日の各省の報告には、残念ながら物足りなさを禁じえなかった。
違法サイト、削除は1割以下
一つは、「野放し」状態だったオンラインカジノサイトの現状だ。
昨年9月に改正ギャンブル等依存症対策基本法が施行されて以後、サイトに誘導する広告やSNSでの情報発信が明確に禁じられた。「入り口」を塞ぐことで、アクセスそのものを抑止する狙いからだ。
警察庁は、同庁が委託する「インターネット・ホットラインセンター」で通報を受け付け、サイト運営者やSNS事業者に削除を要請した結果を明らかにした。違法サイトの通報は、運用開始から約3か月間で464件あったが、このうち削除を要請して5営業日以内に削除が確認できたのは43件にとどまった。また誘導する行為に該当するのは2789件にのぼり、こちらも削除が完了したのは558件だけだった。
サイトの削除が1割以下という結果に、議員からは「削除件数が少ないのではないか。禁止行為となったのに、警察からは依頼にとどまっているのか」「さらなる強い対応を考えているのか」といった指摘が相次いだ。
これに対し同庁の説明は「海外サイトの場合は難しい。自主的な対応をお願いするのが我々のやれる限界」「プラットフォーム事業者やサーバー管理者への地道な働きかけを続ける」というものだった。
すでに法施行から半年以上がすぎている。こうした実態が続けば、改正法の実効性にも疑問符がつく。罰則規定がなく、要請だけで根絶できるのかについては、当初から懸念の声があった。「依頼ベースでやるしかない」現状に、はがゆさを感じた参加者も多かっただろう。
もっと成果を上げるには、罰則の新設や、海外の業者への働きかけのあり方など、さらなる対処法も検討課題だ。
「ブロッキング」導入へのハードル
当面、大きな期待を寄せられるのが、問題のサイトにアクセスできなくするブロッキング(接続遮断)だ。
総務省は現在すすめられている有識者会議での議論を紹介し、ブロッキングがアクセス抑止に有効であるという点で見解は一致している、と述べた。導入に向けて前進しているかの印象だ。ただ、この方法は特定サイトへの接続を遮断するため、電気通信事業者が、インターネット利用者のすべてのアクセス先を確認する必要がある。このため、憲法が保障する通信の秘密の侵害にあたるといわれる。
有識者会議の議論では、国民の権利保護の観点などから、踏み切ることに反対か、慎重な意見も多く、導入の方向で固まったとは受け取れない。被害者の家族や支援団体にとって早期導入への期待が大きいことは言うまでもない。その上で、他にとりうる対策をどう尽くしたか、すでに導入している児童ポルノのように刑法の「緊急避難」にあたる例外とまで言えるのか、様々な課題に丁寧に向き合い、納得できる説明を一つずつ詰めることが急がれる。憲法がからむ微妙な問題で、議論が生煮えのまま突っ走れば禍根を残す。
同省は、近く最終報告をパブリックコメントにかけ、意見を募るという。昨夏に公表された中間論点整理には500件近くの意見が寄せられ、多くがブロッキングに関するものだった。
警察庁によると、オンラインカジノの2025年の摘発件数は158件と、過去最多にのぼった。取り締まりの強化や違法との認識が広がり、少しずつではあるが対策が進んでいる側面もある。だが、なお十分とはいえない。
新たな策への関心は高い。期待と不安の双方を頭に入れ、最善策を示してほしい。
各省でばらばらのカード利用規制
この日の会合では、「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表が、公営ギャンブルで馬券などをインターネットで買う際、クレジットカード使用が許されていることの問題性を、各国の事例をあげながら訴えた。

報告によると、他国ではカード決済が以下のように制限されている。
- イギリス 2020年4月~ 宝くじ以外すべてのギャンブルで禁止
- オーストラリア 2024年6月~ オンラインギャンブルで禁止
- スウェーデン 2026年5月~ すべての借金決済を禁止
- ニュージーランド 2026年~ マネロン防止のためカジノでの禁止
……等々
日本では、パチンコや競艇ではカードの利用、つまり後払いによる賭けが認められていない。だが、競輪や競馬などでは可能なのが現状だ。公営競技ですらカードが使える日本の対策の遅れは明らかだ。
競馬を所管する農水省の担当者は、カード利用の規制について「公営競技が一体となって進めていく」必要性を認めつつ、「懸念の声は承知しているが一定の利用者があるなかで、実際の利用状況、依存症との関連性を踏まえたうえで慎重に検討されるものと承知しており、クレカの是非にとどまらず、インターネット投票のアクセス制限、購入限度額の周知などが総合的に推進されるよう、指導していきたい」と説明した。
競輪を所管する経済産業省も同じ認識だと、後日、取材にこたえた。
カードを使って賭ける行為は、借金の巨額化や、依存症の拡大を助長する。だからこそ政府は昨年、推進基本計画に「公営競技のオンライン化への対応」として「クレジットカード等の後払い決済の見直し」を明文化したのではなかったか。今さら依存症との関連を踏まえて慎重に、との説明には違和感を覚えた。
カード会社など業界を監督する金融庁の担当者は「所管官庁の対応を見守る」と述べるにとどめた。
ギャンブルによるカード利用であることを、カード会社側がすべて把握することには限界もあろう。だが、運営する側の対応としては競艇やパチンコ業界にできて、競輪、競馬ではやらないという理屈は通らない。全ギャンブルで禁止にまで踏み込んだ国もある以上、もはや禁止を決断する段階に来ている。
ギャンブルは借金してやるものではない。日本中央競馬会(JRA)が率先してカード決済禁止を宣言し、模範を示して——。田中代表からはそんな提案も出された。
一刻の猶予もない。そんな緊張感をもって踏み切ってほしい。
息子の死を意味のあるものに
議連は近く政府への要望をまとめるという。
中谷会長は会議の終了後、「複数の論点が明らかになった。早急に改めて会合を開き、要望をまとめて具体策につなげていきたい」と話した。
ぜひ国会が先導して、スピード感をもって前に進めてほしい。
忘れてならないのは、ギャンブルから抜け出せず、最後は自殺にまで追い込まれる人がいることだ。この日の会議では、2人の遺族が深刻な被害の実態を訴えた。
33歳の息子を失ったという母親は、安定した収入があったのに競艇にはまり、家族にうそをついてまで借金を重ねたわが子が、財布に234円の現金を残し、死に至った経緯を涙ながらに語った。息子は家族にメッセージを送った後、川で入水自殺したという。
大勢の人の前で、子の自死について話すのは勇気のいることだ。「この悲惨な現実が依存症対策の強化につながることを願ってやみません」と母親は話した。
失われた命を無にしてはならない。
