学校で「ダメ。ゼッタイ。」教育を受けてきた僕が、取材を通じて大阪IRに疑問を抱いた理由
『こちら日本中学生新聞』を出版したばかりの15歳のジャーナリスト、川中だいじさんは大阪IRの問題も追及している。学校で学んだ「ダメ。ゼッタイ。」の知識と、ギャンブル依存症問題を考える会の田中紀子代表を取材して分かったことのギャップとは?

公開日:2026/05/03 02:03
『こちら日本中学生新聞』(柏書房)を出版したばかりの若きジャーナリスト、川中だいじさん(15)。
地元・大阪に2030年に開業予定の大阪IRの取材を続けてきた。
反対の声も根強いIRについては、ギャンブル依存症問題を考える会の田中紀子代表にも取材をしているが、どう捉えているのだろうか?
大阪IRの住民投票やプロ野球のオンカジ摘発でギャンブル依存症に関心
——大阪・関西万博の問題やIR構想についても取材していますね。これはやはり地元・大阪のことだから関心があるのでしょうか?
それはやはり地元のことだからというのが大きいと思います。自分の住んでいる大阪市で、万博や統合型リゾートIRが開かれるし、特にIRに関してはカジノまでできるわけですから、ちゃんとその問題点を取材していきたいと思ったのですね。
——学校の友達にアンケートを取っていますが、若い世代はビッグプロジェクトが孕む問題には関心がない感じですね。
万博に関してはまだ未払いの問題もありますが、満足度で見れば成功裡に終わったと言われれば終わったのも事実です。周りの友達に感想を聞くと「万博楽しかった」という声が90%ぐらい。僕も5回行きましたが、はっきり言って楽しかったです。
でも僕も含むメディアの役割は、楽しかっただけではなく、それに絡む問題点は行政の問題ですから、それを行政に投げかけたり、問題点をしっかりと明るみに出していくことです。
少しでも関心を持ってもらおうとアンケートも取りましたが、IRに関してはあまりみんな関心ないですね。
——IRに関する取材で田中紀子さんに行き着いたのがすごいと思います。IRやカジノは確かに子供には関係ないかもしれない。でもよく考えると今、違法なオンラインカジノに子供の頃からハマって、借金が膨らみ、犯罪に手を染めてしまう問題が起きています。なぜIRを追及しようと思ったのですか?
それこそこの問題については2022年に住民投票をしようという動きがありまして、そのIRに反対する団体から取材してくれと言われたんです。2022年にはまだ小学生でしたが、住民投票を求める署名活動があって、そこから関心があった。
そこから関心を持ち始めて、身近な話題になりました。
他には最近、プロ野球選手が闇カジノやオンラインカジノをやって摘発された問題が起きました。中学生は野球好きが多いので、オンラインカジノは身近な問題になっていると思います。芸人さんもオンラインカジノをやっていたことが問題になって、身近な問題になっています。
「ダメ。ゼッタイ。」教育では知らなかったことを取材
——田中紀子さんにはどうやって行き着いたんですか?
旧Twitterで相互フォローだったんです。そこから田中さんの情報はTwitterや記事で拝見していて、そこで学んできたところもあったので、この本をきっかけに取材できればと思って取材しました。

——実際取材してみて、知らないことはありましたか?
ほぼ知らないことだらけでした。もちろん取材するにあたって、事前に色々な情報を調べましたけれど、中学でも依存症の教育はあるんですね。保健体育でもありましたし、依存症に特化した教育も1時間ありました。
でもそこではやはり「薬物を渡すような人がいたら逃げろ」とか、「ギャンブルはダメ。ゼッタイ。」みたいな内容です。そのような内容になっているのは問題だなとは思っていたのですが、田中さんのお話を聞いて、分断を煽る教育になってしまっているのは事実だと思いました。
そもそもギャンブル依存症とは何なのか?答えられる人の方が少ないのではないのだろうか。依存症と聞いて、どこか差別的な考えを持ってしまっている人の方が多いのが現実ではないだろうか。実際にぼくが中学校で習った依存症の授業も、薬物はダメですよ、買ってはダメですよという内容で「ダメ。ゼッタイ。」の啓発ポスター程度の内容でしかなかった。依存症は「病気」と誰も教えてくれない。だから、多くの人が「あの人は心が弱いから」と後ろ指を指してしまうような、間違った認識が広がってしまっているのではないだろうか。知識なくして考えようがない。
依存症が病気だということは田中さんの記事を読んだりして自分の中で形成されていましたが、読まない限りはそういうふうに思えていなかったかもしれません。今の教育では病気だとは到底思えないですよね。意思が弱い人が依存症になると思ってしまう。
取材の中で田中さんは予防教育が必要だとおっしゃっていました。自分の周りの人が依存症になった時にどうやって医療に結びつけることができるかを学ばないと、ただ排除してしまうことになる。それはある意味、日本のやってきた旧優生保護法などに結びつく考え方になってしまうんじゃないかなと思いました。
——なんて深く理解しているのかと驚きました。そこまで感じたのですね。
そうですね。そう思いましたね。
学校の「ダメ。ゼッタイ。」教育にも疑問
——ギャンブルだけでなく、薬物もアルコールも依存症はどれも病気です。でも今は、たとえば芸能人が薬物で逮捕されると、メディアではものすごくバッシングをします。そういうものを見て育ってこられたと思います。
そうですね。
——ワイドショーもご覧になったことがありますよね。
あります。ちょうどピエール瀧とか沢尻エリカが逮捕された頃は見ていました。でも特段差別心はなかったですね。
——そういう報道に影響されて「あいつらはダメだ」と排除してしまう視聴者と、きちんと俯瞰して見ることができる人といます。何がそれを分けるのでしょうね?
ピエール瀧の逮捕は小学生の頃です。その頃は薬物をやっているんだぐらいにしか思わなかったからかもしれません。奥の情報がわからないから、ダメだともいいとも思わなかった。
——でも保健体育の授業で、一度でも使ったら人間終わるよ的なダメ。ゼッタイ。教育を受けてきたと思うのですが。
おそらく小中学生のころにその教育があったのでしょうけれど、あまり覚えていないのですよね。でも一番印象深かったのは、中学の頃の保健体育の見開き1ページを使った依存症教育です。
シンナーを吸った男性はきちんと丸が描けない、とか、そんな絵や図がありました。逆に言えばそういうことしか学ばないんです。だからある意味、依存症教育にも疑問を持ったのだと思います。
大阪IR、依存症対策は不十分
——大阪IR、「依存症対策もしっかりやります」とうたっていますが、十分やられていると思いますか?
田中さんに取材をして、日本の依存症対策、そして大阪の依存症対策は、ほぼ崩壊に近い状態であることを知りました。
大阪府、市は、IRにカジノが入るにあたって、6000円を入場料として支払ってもらうと言っています。それに加えて、マイナンバーカードを提示することによって本人確認ができるとし、これで反社会的な団体を排除することができると言っています。
でも、田中さんは、6000円なんて微々たる金だとおっしゃっているわけです。ギャンブラーは万単位、何十万円、何百万円単位で賭ける中で、6000円なんて微々たる金だと。
吉村知事は、これで十分な依存症対策だと言っていますが、本当にそうなのかなと疑問を持ちました。やっぱり田中さんの「微々たるお金だ」という指摘は大きいと思います。
自分が取材するにあたって、TwitterでもIRの問題やカジノの問題点を追及すると、維新支持者の方から、「じゃあパチンコはええんか?」と言われます。パチンコやパチスロはいっぱい街中にあるけれど、あれはええんかとリプライで書かれたり、引用されたりしていました。
でもそういう話ではないじゃないですか。
もちろんカジノができるから特にそれに興味を持ったのは事実ですが、身近にあるパチンコやスロットでも依存症になっている方がいて、そちらも救済しなければならない問題です。それに加えて、公営ギャンブルで依存症になっている方もいらっしゃるし、買い物依存症などもあるそうですね。
いっぱい依存症はあるので、それをいかに救済していくかが大切な中で、日本の公営ギャンブルに対する依存症対策もEUに比べると本当に遅れていることも知りました。田中さんに取材して、やはりそこを改善していかないと、カジノは時期尚早じゃないかと思います。僕はそもそもいらないと思っていますけれど。
土台すらできていないのに建てるとなったら、本当に危険だと田中さんの取材を通じて感じましたね。
——これからも取材は続けてくれるんですね。
続けていきたいです。2030年に開業予定ですが、僕は2010年生まれなのでちょうど二十歳の時に開業されます。そのことによるカニバリゼーション効果(共食い効果)として、梅田や難波が衰退してしまう可能性も言われています。果たしてどうなっていくのか、大阪を愛している身としても問題意識を抱いているので、これからも取材していきたいと思っています。
中学生が遊びにいく商業施設でもギャンブルの入り口が
——今はギャンブルも、スマホ一つでできますよね。中学生だったらスマホを持っているし、違法なオンラインカジノにも繋がれます。親の目の届かないところでやれますね。
やろうと思えばできますよね。
たとえば、梅田の阪急線のところに大きいエスカレーターがあるのですが、そこを降りたところにはかなり大きめの広告が並んでいる。「オッズパーク」という携帯電話で競馬や競輪に賭けられるアプリの広告があるわけです。
違法なオンラインカジノ以外でも、公営ギャンブルも賭けようと思えば、中学生でも賭けられるます。
僕は友達とよくラウンドワン(複合型のアミューズメント商業施設)に遊びにいくんですよ。カラオケやボーリングをやるのですが、ゲームセンターの隣に、お金ではなくコインで賭けるスロットやパチンコや競馬のゲームがある。結構そういうところからもハマっていくのかなと思ったんですよね。
ずっとそこにいるおじさんもいて、お金は賭けないのですが、コインを買うのって結局お金を費やしていること。それでハマっていくのかなと思ったりします。
——若者が遊びにいく施設で、ギャンブルに出会う入り口になってしまうわけですね。
そうです、そうです。コインだから中学生が賭けても問題ない。かなり身近なところにそういう入り口があちこちにある。
実は僕もこの前一回賭けてみたんですよ。で、全部負けたんです。
僕も詳しくは知らないですが、最初にたくさんコインが出てきたら、やり続けたい気持ちになるだろうなとは思います。
——ビギナーズラックでギャンブルにハマって、借金を抱えて、闇金などにも借りるようになって、犯罪に巻き込まれていくことが問題になっています。最悪、自殺にまでつながっています。ぜひ若い方に危険性を伝えるためにも取材し続けてほしいです。
やっぱり身近な問題ですよね。
闇バイト摘発もそうですが、闇バイトに至るまでの過程をしっかりと政府や警察庁全体が洗いざらい調べる必要があります。特に大阪は、闇カジノがいっぱいまだ残っているというので、そこも全部摘発していかないといけないと思いますし、それを抜きにカジノ解禁というのはおかしい。
行政たるものは、国民のために、国民の福祉のために、安心安全のためにあるべきものですから、それをすっぽかしてやっていくのはどうかしているなと僕は思います。
【川中だいじ(かわなか・だいじ)】「日本中学生新聞」記者
2010年、大阪市生まれ。小学3年生の時に政治に関心を持ち、2023年に「日本中学生新聞」を創刊。「誰にも遠慮せずに書きたいことを書く」をモットーに、選挙をはじめ大阪・関西万博、IRカジノ、森友学園問題などを取材し、SNSやYouTubeで発信している。雑誌やウェブメディアへの寄稿も多数。2025年春より、テレビ大阪の公式YouTubeチャンネル「大阪NEWS【テレビ大阪ニュース】内の番組で、「中学生記者・だいじの対談クラブ」で聞き手を務めた。『こちら日本中学生新聞』(柏書房)が初の著書となる。
