ギャンブル依存症で死ぬほど苦しんでいる人、家族へ 「相談から解決が始まる」 考える会がショート動画を制作
ギャンブル依存症は生きる気力を奪う病です。自殺対策強化月間の3月、ギャンブル依存症問題を考える会は、ギャンブルで苦しむ当事者や家族に向けて、解決の道筋を伝えるショート動画を作成しました。

公開日:2026/03/09 02:28
3月は自殺対策強化月間です。
依存症者は苦しみながらギャンブルをしている
ギャンブル依存症者は「好きでやってる」「楽しくてやめられない」と、堕落的な人間のように思われがちですが、それは全く違います。当事者は、ギャンブルによる借金や家庭不和、さらには犯罪行為などにまで手を染めており、頭の中は悩みと苦しみでいっぱいです。
ところが病気の症状で「借金を返すために、ギャンブルで一発当てるしかない」という思いに取りつかれていくのです。こうなるとギャンブルなんかまったく楽しくはありません。なんとかお金をかき集め、人生を賭けているのですから。あなたなら、この勝負に負けたら、全財産どころか、家族も仕事も失う——そんな賭け事がしたいでしょうか。
私は今も昔も絶対に嫌です。ギャンブル依存症真っ最中の時だって、そんな勝負は怖いし、負けることが判っているし、やりたくもありませんでした。
でも、「ここで万が一勝てたら、この苦しみから逃れられるんだ」と思ったら、賭けるしかないと追い詰められていました。
生きる気力さえ失われていく依存症
この状況を例えていうならばこんな感じです。
もし、あなたがたった一人で砂漠に取り残されたとします。行けども行けども砂の平原しかなく、へとへとに疲れ、喉もカラカラに乾いている。そんな時に、手のひら1杯分の泥水の水たまりが見つかりました。あなたはこれを飲まずにいられるでしょうか。病原菌でお腹を壊して致命傷になるかもしれない。それでもこの乾きが一瞬でも癒されるのならと、理性の歯止めなど吹き飛んでしまいませんか?
これが借金を重ねたギャンブル依存症者です。飲めば飲むほど病原菌で体が弱る泥水のようなもの。それを繰り返すうちに、飲んでも飲まなくても地獄だと、生きる気力がなくなってしまいます。生きることに疲れ果ててしまうのです。
私も、末期症状だったときは、自殺念慮が消えませんでした。毎日、睡眠薬をビールで飲みこみ、「死んで楽になりたい。でも死ぬのは怖い」という思いと毎日闘っている状態でした。
スマホでギャンブルができる時代の犠牲者は20代の若者
私がギャンブルにハマっていた時代から、現代はさらにギャンブルがやめにくくなりました。ご存じの通り、今ではスマホアプリでギャンブルができる時代になったからです。競馬・競艇・競輪・オートレース、公営競技がいつの間にかアプリで投票できるようになり、今では公営競技の売り上げはなんと7兆円を超えてきました。
そのため現在ギャンブル事業者及び、その周辺にいる、アプリ事業者を行うテック企業、銀行や後払い決済事業者などのフィンテック企業の宣伝攻勢にあい、ギャンブル依存症に陥っているのは20代の若者ばかりです。
そしてこの少子高齢化が進む我が国で、大切な若者たちが大人たちからギャンブルで金を巻き上げられ自殺に追いこまれているのです。
年々増えていくギャンブル等の借金による自殺
当会に寄せられる、自殺の報も格段に増えています。現在では当会にご家族が繋がって来られた方でも、年に6名くらいは当事者の方が自殺で亡くなったと連絡が来ます。
警察庁の発表によれば、R6年度のギャンブル等の借金で亡くなった人は398名です。これはR4年度337人、R5年度389人と増加しており、原因が分からないケースを含めると実際にはもっと多くの方が自殺に追い込まれていると考えられます。
支援の現場にいる私たちも、最も防ぎたいのが自殺です。現在、(公社)ギャンブル依存症問題を考える会では、休眠預金を活用させて頂いて自殺対策に取り組んでいます。
自殺対策支援のショート動画を作成
その一環で、我々の支援の流れを判りやすく7話分のショート動画に致しました。すでに当会のYoutubeショートや、SNSなどでも流しておりますが、改めてAddiction Reportで動画に込めた思いを解説したいと思います。
トモヤというのは、ギャンブル依存症の当事者この物語の主人公の名前です。親に何度も借金の肩代わりをしてもらっており、既にその額は1000万円を超えています。
これまでにも「これで最後」「絶対に最後」という言葉を何度も使ってきましたが、ギャンブルは止まりません。今回は、その上会社のパソコンも質入れしてしまいました。
ギャンブル依存症の知識がない父親は、自分の常識から考え「会社を懲戒解雇になってしまうぞ」と説教をします。そして当事者の「これで最後」という当事者の言葉にすがりつき、またも肩代わりをしようと決意します。
最近の相談の典型的なパターンで、会社人間である父親が最も恐れるのが「会社に迷惑をかける」ということです。その父親の特性を、見事についてくるのがギャンブル依存症者です。親の弱点をわかっていて、お金を出させる作戦を考えます。
ギャンブルでの借金の肩代わりを銀行員が制止
父親が、借金の肩代わりをするために銀行で定期預金の解約を申し出ます。
最近の銀行では、大きな金額の解約や振り込みがあった場合は、振り込め詐欺防止のために使途を聞かれます。このドラマでは、「使途が息子のギャンブルの肩代わり」と聞いた銀行員が「それってギャンブル依存症かもしれません。家族会に相談してからお振込みされては?」とアドバイスをしてくれます。
視聴者の皆様は「そんなことあるの!?」と驚かれたかもしれません。けれどもこれは実際にあった話なのです。
私たちがギャンブル依存症の知識を広めたいと思う所以です。知識があれば、早期に対処することができます。
この実話は宮城県のゆうちょ銀行での話です。こうして一人の仲間が実際に、我々に繋がって参りました。
家族会に相談へ
銀行員に促されて家族会にやってきたお父さん。息子をまだギャンブラーと認めたくありません。「借金の肩代わりも、物品の差し入れもせずに突っぱねて、当事者には支援団体の相談電話の番号を伝えるように」と言われます。けれどもお父さんはまだ半信半疑。「そんなことをしている間に会社をクビになってしまう」「食事もできない息子がかわいそう」と葛藤の表情です。
全国の家族会を回り、相談会に同席してきた高知東生さんならではの名演技。お父さんの苦悩がよく表れています。家族会の様子は、実際の家族会メンバーに登場してもらっています。ご覧いただいて判るように、ギャンブル依存症の家族も普通の人達です。
家族に見てほしい 正しい対処法
この第四話が今困っている、特にご家族に見て頂きたいお話です。お金を振り込んでこなければ、ギャンブラーは「会社をクビになる」「死ぬしかない」と、親が最も心配になる言葉で脅してきます。親は、この脅しとの根比べになります。
このドラマでは、ギャンブラーからの電話には出ず、LINEを通じて支援団体の情報を伝えます。「親にできることはもう何もない」ときっぱりと突っぱね、それ以降は携帯をブロックしてしまいます。これが私たちが推奨している、セオリー通りの行動です。
親に頼ることを諦めざるを得なくなったギャンブラーは、仕方なく民間支援団体に相談電話をかけます。
こうして当事者が、ギャンブルをやめるために必要な仲間と出会っていきます。
家族はこのギャンブラーとのせめぎ合いが一番辛い時です。
でもこの動画をご覧になって「厳しい選択で、必ず未来は開けていく」と、ぜひ勇気を持って下さい。
当事者同士だからわかる気持ち
恐る恐るかけてみた相談電話から、地域のギャンブル依存症から回復している仲間たちが集まりました。
そこで問題を全部打ち明けてもらいます。パソコンの質入れ、会社の人に200万円の借金、そして現在持ち金ゼロ。これが今、抱えている問題です。
普通の人なら「なんでそんなことになるんだ」「なんでそこまで使ってしまうんだ」
「なんで!?」「なんで!?」と質問攻めになるところです。
ところが当事者同士なら、理由は言わなくとも分ってくれます。答えはたった一つギャンブル依存症に罹患したからです。
そして当事者も気が付いていない、「ギャンブルの金はギャンブルで取り戻す」という病気の症状を説明してあげると大きな共感が生まれます。
自助グループと借金の問題への対処と
ギャンブル依存症問題は共感だけでは解決できません。まず今目の前にある、借金問題を同時に着手していかなくては、ギャンブルをやめることに向き合えません。
このドラマに出てくる、持ち金0円の人に対して、少額の生活費をカンパするというやり方を、我々の間では「ギャンブル版ハームリダクション(*)」と呼び、自傷他害の恐れを極力軽減することを目的に実際にやっています。家族が肩代わりしていたのでは、支援につながって来ませんが、支援に繋がったからといって、急にお金の問題が解決するわけでもありません。手持ちのお金がないのなら、そのお金をなんとかしなくては、自殺や犯罪を食い止めることができません。そこで私たちがカンパをしています。
*ハームリダクション:特に薬物依存症の治療・対策において広まった「直ちに薬物使用をやめる」ことだけを目標にするのではなく、薬物使用によって引き起こされる健康・社会・経済的な悪影響(ハーム)を、少しでも減らすことを優先する考え方。
会社の人にギャンブル依存症を告白して、謝罪し、借用書を書いて返済するという方法は、我々が実際にやるアドバイスの一つです。正直な告白と誠意ある態度を示せば、ほとんどの方が理解してくれます。
また実際に、パソコンの質入など業務に支障をきたす場合には、当会から家族会に連絡を取り、一部家族に肩代わりの協力を申し出ることがあります。ただいきなり肩代わりしてしまうのではなく、短期間にはなりますが、繋がってきてからきちんとミーティングに通えているか?などの約束を守っている場合のみお願いするようにしています。
ドラマでは、週2回の自助グループミーティング通いと、ズームによるミーティングを週4日提案されていますが、実際最初の頃はこのぐらいの頻度でミーティング通いをしなければ、依存症からの回復などできません。
ギャンブル依存症の家族の中には、月1回の病院通いが始まったかと安心してしまう人がいますが、そんな頻度で回復できるほど、依存症は甘い病気ではありません。
回復した人が今度は支援する側へ
家族会に招かれて、回復したギャンブラーが体験談を発表しているシーンです。
私たちが、最も喜びを感じる場面です。ギャンブル依存症から回復し、家族が再構築されていくことは目標の一つでもありますが、非常にリスキーな時でもあります。当事者も家族もギャンブル依存症の知識を深め、また境界線を脅かさないように自助グループで心の勉強をしながら、回復し続けることが大切です。
生きててよかったと思える日が必ず来る
いかがでしたでしょうか。
「自分たちのギャンブルの問題なんか相談してどうなる?」
多くの人がそう思っていることでしょう。けれども実際には、相談から解決が始まるのです。
ギャンブル依存症問題は、当事者と家族にとって、死にたくなるほど苦しい問題です。その気持ちを理解し、どんな借金問題でも解決策があると知っている我々経験者を、どうか頼ってみてください。
「生きててよかった」と思える日が必ず来ます。私たちは経験からそれを知っています。
